医療のIT化や遠隔診療の普及に伴い電子カルテの導入がますます注目されていますが、「クラウド型」「オンプレミス型」の違いで迷っている方も多いでしょう。
一般的に、往診の多い医師や開業してから年数の短いクリニック・診療所ではクラウド型電子カルテが選ばれやすい傾向があります。
そこで本記事では、「クラウド型電子カルテ」について、メリットやデメリットとともに導入時のチェックポイントについて紹介していきます。
クラウド型電子カルテとは、インターネットを介して提供される電子カルテのオンラインサービスです。
外部に設置したサーバにデータを保管し、必要な時にアクセスして利用するため、低額・省スペースで導入することができます。
電子カルテには他に、院内にサーバを設置し、院内でシステムが完結するオンプレミス型もありますが、2021年に日経メディカルOnlineが開業医に実施した調査によると、最近開業した医院ほどクラウド型電子カルテの導入が増えていることがわかりました。
今後ますますクラウド型が電子カルテの主流になってくるでしょう。
クラウド型電子カルテが選ばれるのには、以下の3つのメリットが関わっています。
システムのカスタマイズやサーバ購入により初期費用がかさみやすいオンプレミス型に対して、クラウド型は必要な機能に絞り、すでに稼働している外部のサーバを利用するため、導入時にかかる費用を大幅に抑えることができます。
また、メーカーにより金額は異なりますが、運用コストも比較的低額な場合がほとんどです。
クラウド型はインターネット経由でクラウドサーバに接続して使用するので、ノートパソコンやタブレットPCといった、ネットにつながる端末を用意すればどこでも使用可能です。
往診中や在宅時はもちろんのこと、入院患者のベッドサイドのような診療室外でもオンタイムで記録を記載することもできます。
クラウド型は外部にサーバを設置して自動でバックアップするのが基本なので、災害にも強く、万が一院内の端末に何かあってもWeb上でデータが保管されるというセキュリティ上の利点があります。
個人情報の紛失や流出は大きな問題になりかねないため、セキュリティが高いというのは大きなアドバンテージといえるでしょう。
多くのメリットがあるクラウド型電子カルテですが、導入する際には以下のような注意点もあります。
クラウド型電子カルテはオンラインでの利用が前提であるため、ネットにつながらない状態では使用できません。
インターネットに接続できない場所やモバイルWi-Fiルーターなどインターネットに接続するための通信端末なしで外出するケースには弱いといえます。
インターネット環境で使用する場合でも、通信速度が遅い回線や接続が不安定な場所では、操作中に若干のタイムラグが発生する可能性があります。
また、情報の更新時にはサーバとの通信を経由するため、記入内容が反映されるまで少し時間がかかることもあります。
施設ごとにオリジナルのシステムを構築するオンプレミス型に対して、クラウド型は自由度が高くありません。
一般的な医療機関に必要な機能に絞って提供されるため、システムのカスタマイズはできない場合がほとんどです。
最後に、クラウド型電子カルテの導入や運用に際し、チェックしておきたいポイントを解説します。
すでに院内に導入しているレセコンやWeb予約システム、医療検査機器といった、他のシステムと連携できるか事前に確認しておく必要があります。
特定のメーカーの製品やシステムでなければ連携できないものもあるので注意が必要です。
また、レセコンと一体型となった電子カルテの場合、既存のシステムやレセコンからデータ移行ができるかも確認する必要があります。
クラウド型電子カルテの中には、特定のOSや端末での使用を指定していたり、対応していないデバイスがあったりする場合があります。
事前に使用環境を確認したうえで導入しないと、端末の買い直しが必要になるため注意が必要です。
よく使う所見や検査・投薬オーダがセットやテンプレートにできると、少ない操作で簡単にカルテ記載ができるので非常に便利です。
また、紹介状などの作成もテンプレートがあれば、必要事項を書き込むだけで簡単に文書が作成できます。
運用開始前に操作方法の院内研修を行ってくれる、システムに不具合が起きた際は迅速に対応してくれるなど、サポートの手厚いところを選ぶと、導入後も安心して運用できます。
クラウド型電子カルテとは、オンライン上で利用する電子カルテであり、低額で導入・運用でき、インターネット環境さえ整っていればどこでも使用可能。
さらにデータを外部に保存するのでセキュリティも高いというメリットがあります。
一方、オフラインでは使用できない、タイムラグが発生する、カスタマイズがしにくい点には注意が必要です。
導入の際は、既に稼働している他のシステムとの連携や端末やOSなどの使用環境を確認のうえ、業務に合ったセットやテンプレート機能の有無やサポート体制も十分にチェックしましょう。