コラム

2022/02/25

【令和4年度診療報酬改定】産婦人科領域の改定ポイントを解説

【令和4年度診療報酬改定】産婦人科領域の改定ポイントを解説

2022年2月に厚生労働省より「令和4年度診療報酬改定」の内容が示されました。
産婦人科領域においては、不妊治療をはじめとする生殖医療の保険適用が大幅に拡大されたのが、最も大きな改定点といえるでしょう。

今回は、産婦人科における診療報酬改定のポイントとともに、医療事務担当者が新年度までに行う準備や流れについて解説します。

注:令和4年4月1日から施行される診療報酬改定情報についてまとめています。

細心の注意を払っておりますが、当サイトの情報取り扱いについては自己責任にてお願い致します。

なお、改定内容全文については、下記厚生労働省のWebサイトでご確認いただけます。

厚生労働省令和4年度診療報酬改定について

【目次】

 
           

令和4年度診療報酬改定により産婦人科での保険適用が拡大

従来、保険適用外で自由診療となっていた特定不妊治療ですが、令和4年度診療報酬改定により保険適用が拡大されました。

令和2年度第3次補正予算により実現した特定不妊治療費助成制度では、保険適用されるまでの間は、特定不妊治療でも30万円までは自己負担なく受けられるようになっていましたが、今回の改定により令和4年度からは3割の自己負担となります。

ただし、すべての不妊治療が保険適用となるわけではなく、保険適用されないものは引き続き自由診療として全額患者負担が基本となります。

保険適用が拡大される不妊治療の対象は?

今回の改定により保険適用の対象となる不妊治療の技術や対象者の年齢、回数は以下の通りです。

治療法

日本生殖医学会、日本産科婦人科学会、日本泌尿器科学会が作成した「生殖医療ガイドライン」のうち、体外受精や顕微授精、人工授精など学会の推奨度AおよびBの技術について保険適用(3割負担)となります。

また、男性側への治療も保険適用対象となりました。

推奨度Cについては保険適用外(全額自己負担)ですが、医療機関から申請があった技術に関しては先進医療(当該生殖補助医療部分のみ自己負担)として実施できるように、引き続き審議が続けられるとのことです。

年齢

保険が適用されるのは43歳未満の女性が対象となっています。

注意したいのは、これは治療開始時点の年齢である点です。

例えば、治療の途中で44歳になったので自己負担に切り替わるわけではないということです。

また、男性側の年齢制限は設けられていません。

回数

治療回数は、40歳未満は1子につき6回まで、40歳以上43歳未満は1子につき3回までが保険の適用となります。

新規で保険適用対象となる不妊治療の費用と負担額

今回の改定で新しく保険適用となった不妊治療について、診療報酬に基づいた費用の相場と、3割負担した場合に患者が実際に支払うことになる金額を紹介します。


治療内容費用相場3割負担時の費用
採卵¥106,000¥31,800
採精¥44,000¥13,200
体外受精(媒精)¥47,000¥14,100
顕微授精¥56,000¥16,800
胚培養¥46,000¥13,800
胚凍結保存¥38,000¥11,400
胚移植¥71,000¥21,300
卵子活性化¥29,000¥8,700
PGT¥110,000¥33,000
アシステッドハッチング¥17,000¥5,100
高濃度ヒアルロン酸含有培養液¥13,000¥3,900
顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)¥253,000¥75,900
人工授精¥22,000¥6,600
※上記金額は複数の病院のデータを基にした平均値である点にご注意ください。

診療報酬の改定もチェックしよう

診療報酬改定は以下の通りとなりました。

産婦人科では、「不妊治療の保険適用のための特例的な対応」に注意が必要です。

診療報酬

診療報酬 +0.43%

※1 うち、※2~5を除く改定分 +0.23%(医科の改定率は+0.26%)

※2 うち、看護の処遇改善のための特例的な対応 +0.20%

※3 うち、リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化 ▲0.10%

※4 うち、不妊治療の保険適用のための特例的な対応 +0.20%

※5 うち、小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来 ▲0.10%

薬価等

①薬価 ▲1.35%

※1 うち、実勢価等改定 ▲1.44%

※2 うち、不妊治療の保険適用のための特例的な対応 +0.09%

②材料価格 ▲0.02%

 
           

診療報酬改定の準備を進めよう

診療報酬改定により診療点数が変わると医療機関の収益にも影響が出ます。

そのため、請求業務を行う医療事務担当者は改定対応の準備を進める必要があります。

そこで、改定内容の発表から臨床現場へ反映するまでの流れを解説します。

白本の内容を理解する

白本と呼ばれる「改定診療報酬点数表参考資料」の内容を把握することが第一段階です。

前年12月に行われた予算大臣折衝を踏まえて1月下旬~2月上旬に改定内容が決まります。

改定内容には点数の変更だけでなく、算定方法の変更や新規追加あるいは除外される点数も含まれます。

中医協(中央社会保険医療協議会)の諮問や答申までの議論をチェックしておくと、改定の特徴や点数変更の意図が理解しやすくなるでしょう。

収支シミュレーションを行う

白本を読み込んだら、収支シミュレーションを行います。

まずは大まかな増減を把握するため、単純に新旧の点数を置き換えて影響額を計算します。

次に、算定に必要な条件変更に則り、加点できない場合の影響額や、新設点数を加点した際の増額金額を算出します。

また、人材を雇用することで新たに加点できそうなら、それもシミュレーションしましょう。

増収になるようであれば、人件費などについても考慮し、費用対効果を踏まえて雇用を検討していきます。

経営者にブリーフィングする

シミュレーションの結果を院長や経営陣にブリーフィングします。

最善の決定ができるように改定の趣旨や意図に加え、自院の理念やビジョンとも照らし合わせた説明を行いましょう。

院内に周知する

経営者の決定が下ったら、院内の各部署へ周知します。

部署によっては業務内容を変更せざるを得ないケースが多々あります。

改定内容と影響をわかりやすく説明し、理解してもらうことが大切です。

説明が難しければ外部講師を活用しても良いでしょう。

改定内容を反映する

レセコンのマスタ変更、変更内容の確認、施設基準の変更などの手続きを行います。

変更手続きは期限を過ぎると4月から点数を算定できなくなってしまうため、期日厳守を徹底しましょう。

まとめ

令和4年度診療報酬改定により、産婦人科では保険適用対象となる不妊治療が拡大しました。

体外受精や顕微授精、人工授精など「生殖医療ガイドライン」の推奨度A・Bについては新規で保険適用となります。

医療事務担当者は「不妊治療の保険適用のための特例的な対応」といった新規の診療報酬の加点・減点に注意しながら収支シミュレーションを行いましょう。

経営層への説明や院内への周知、改定内容の反映などで忙しくなりますが、期限内に行わないと4月から算定できないため注意が必要です。

 
 

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