令和4年度診療報酬改定が発表され、わかりやすい解説を求めている方も多いはずです。
急性期および回復期病院のリハビリテーション部門に勤務される療法士にとっても、どのような点が改定され、働き方にどのような影響を及ぼすか、気になるところではないでしょうか?
本記事では、リハビリ部門にまつわる診療報酬の変更点について、代表的なものを解説していきます。
注:令和4年4月1日から施行される診療報酬改定情報についてまとめています。
細心の注意を払っておりますが、当サイトの情報取り扱いについては自己責任にてお願い致します。
なお、改定内容全文については、下記厚生労働省のWebサイトでご確認いただけます。
リハビリ部門における令和4年度診療報酬改定のうち、特に療法士の業務に影響する可能性がある以下の4点に着目しました。
これらのポイントについて次章から詳しく解説します。
早期離床・リハビリテーション加算の見直しにより、「対象となる治療室」と「職種要件」が変わりました。
こちらは発症日や手術日から30日を限度として加算できる「早期リハビリテーション加算」とは異なる点に注意が必要です。
早期離床・リハビリテーション加算の対象となる治療室が見直されました。
現行の「特定集中治療室管理料」のほか、「救命救急入院料」や「ハイケアユニット入院医療管理料」、「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」および「小児特定集中治療室管理料」を算定する治療室が追加されました。
上記の治療室それぞれの施設基準についてはここでは触れませんが、条件のひとつに「早期離床・リハビリテーションに係るチームが設置されていること」が定められています。
このチームの構成要員として、これまでは「急性期医療を提供する保険医療機関において5年以上従事した経験を有する専任の常勤理学療法士、専任の常勤作業療法士」とされていたところが、令和4年度からは言語聴覚士も対象となりました。
また、「特定集中治療室管理料」と同様、この管理料をとっている場合には「疾患別リハビリテーション」は算定できません。
☑令和4年度診療報酬改定のポイント
発症・受傷後まもない状態から、STも含めた療法士が「専任」でリハビリを提供できる場が拡大されました。小児領域などでも、多職種による包括的なリハビリテーションの提供が期待されます。
しかし、介入条件によっては、従来通り「疾患別リハビリテーション」で算定した方が良い場合もあるので、収益などを事前にシミュレーションしておきましょう。
回復期リハビリテーション領域での代表的な改定として「回復期リハビリテーションを要する状態の見直し」と「施設基準における重症患者の割合の見直し」について解説します。
回復期リハビリテーションを要する患者の状態として、「急性心筋梗塞、狭心症の発作若しくはその他急性発症した心大血管疾患の発症後又は手術後の状態」が追加されました。
具体的には「回復期リハビリテーションを要する状態」について、「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」を追加、と定められています。
これまでは循環器疾患などの方は回復期リハビリテーション病棟に転院できず、地域包括ケア病棟などに選択肢が絞られていました。
しかし、今回算定が認められたことで、今後は回復期リハビリテーション病棟にも転院できるようになります。
施設基準における重症患者の割合についても見直しが行われました。
回復期リハビリテーション病棟入院料1および2については従来3割とされていたのが4割となり、同様に入院料3および4の施設基準では2割から3割へと引き上げられました。
☑︎令和4年度診療報酬改定のポイント
今回の改定により、回復期病院に勤務する療法士は、これまで以上に多くの重症患者さんや循環器のリスクを抱えた患者さんを診るようになるでしょう。
負担の大きかった「リハビリテーション実施計画書及びリハビリテーション実施総合計画書」への署名の取り扱いが変更となりました。
診療報酬改定によると「疾患別リハビリテーションを当該患者に対して初めて実施する場合を除き」、「同意を得ていること等が事後的に確認できる場合に署名を求めなくても差し支えない」と規定されています。
初回は従来と同様に署名が必要ですが、2回目以降は、やむを得ない場合は「署名」という形でなくても問題ありません。
☑︎令和4年度診療報酬改定のポイント
患者さん本人が意識障害や身体機能障害を抱えている場合も多く、さらに感染症対策でご家族の来院も制限されている中で、書類にサインをいただくのは困難だったでしょう。
今後は、一定の基準を満たしていれば署名が必要なくなるため、より速やかな業務が期待できます。
ただし、これまで通り、説明と同意、診療録への記載、計画書の交付は必要です。
最後に、透析中の運動指導に係る評価について解説します。
「人工腎臓を算定している患者に対して、病状及び療養環境等を踏まえた療養上の必要な訓練等を行った場合に透析時運動指導等加算として、指導開始から90日を限度に75点が算定出来る」という「透析時運動指導等加算」が新設されました。
ただし、「早期離床・リハビリテーション加算」と同様に、加算を算定した日については、疾患別リハビリテーション料を別に算定できません。
☑︎令和4年度診療報酬改定のポイント
透析には、個人差はありますが3時間から半日を要する場合が多く、食事やケアなどの時間も確保すると、リハビリの時間が取れないケースも多いでしょう。
また、透析中に介入しようとしても、透析室や血液浄化センターなどのスタッフとの連携・理解に難渋する施設も多かったかもしれません。
しかし、透析を導入している患者さんには、継続した運動療法を必要としている方も多くいます。
また、透析療法中の運動療法の安全性についても十分な検証がなされてきています。
今回、このような加算が認められたことで、透析スタッフからの理解もより得られやすくなるのではないでしょうか。
ただし、「人工腎臓」の算定に加算されるものであるため、リハビリ部門としての収益にならない点には注意が必要です。
また、加算は疾患別リハビリテーション料よりやや低い75点ですが、「算定要件の概要」には入院中の患者さんについて「理学療法士又は作業療法士の1人当たりの患者数は1回15人程度」といった記載もあり、疑義解釈が待たれるところです。
令和4年度診療報酬改定に伴い、リハビリ部門の変更点についてわかりやすい解説を求めている療法士も多いはずです。
今回の改定では、早期離床・リハビリテーション加算の見直しにより、STも含めた療法士が「専任」でリハビリを提供できる場が拡大されました。
また、回復期リハビリテーション領域では、重症患者の割合が増え、さらに循環器内科や心臓血管外科の患者さんも対象となります。
さらに、条件を満たせばリハビリテーション実施計画書の署名が必要なくなったことや、透析中の運動療法について加算が認められるようになった点にも注目です。
実際の運用や療法士の動きは、疑義解釈やシミュレーション、それぞれの施設内の協議などを経て、総合的に決定していきましょう。