新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的にさまざまな行動制限が課され、日常生活にストレスを感じている人も多いでしょう。
また、企業においてもテレワークの推奨や非対面でのやり取りなど、新しいビジネススタイルへの適応を強いられ、不安やプレッシャーを感じているスタッフもいるのではないでしょうか。
そこで今回は、コロナ禍でのストレスから従業員を守るために、企業が実施したいメンタルケアについて解説していきます。
2021年に内閣府が実施した「第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、新型コロナウイルス感染拡大前と比較して、健康や将来全般、生活の維持、収入などに対して不安やストレスを感じている人が増加傾向にありました。
また、制約を伴う生活に精神的疲労を感じる「コロナ疲れ」に関して、全体の71.6%の人が「感じる」「やや感じる」と回答し、なかでも「感じる」と回答した割合が最も多かったのが20代と30代でした。
このように、新型コロナウイルス感染症の収束が見えないなかで、我慢を強いられる生活に疲弊している人は増えているといえます。
コロナ禍での自粛生活やライフスタイルの変化によるストレスは、仕事にも大きな影響を与えています。
健診業務システムやリハビリテーション支援システムなどのヘルスケア分野のシステム開発を行うタック株式会社では、2019年から2020年にかけて働く男女60万人を対象にストレスに関する調査を行い、「2021年度ストレスチェック実施状況まとめ」として公表しました。
その結果、30代~40代男性と20代以下~30代女性では、何らかのケアを必要としている高ストレス者が多いことがわかりました。
また、ストレスチェック結果によると、男性は「上司や家族・友人からのサポート」、女性は「心理的な仕事の負担(質)」に関してストレスを感じているようでした。
多くの30代~40代男性は会社で中堅ポジションに位置しているため、テレワークによる上司や部下とのコミュニケーション不足にストレスを感じているのではないかと考えられます。
また、コロナ禍での売上減少もあり、より質の高い仕事を期待されることにプレッシャーを感じている女性も多いようです。
さらに産業別で見てみると、宿泊業・ 飲食サービス・製造業での高ストレス者が多く、特に宿泊業・ 飲食サービスでは前年よりも1.8%以上高くなっていました。
また、ストレスチェックの結果では、医療・福祉・宿泊業・飲食サービスで、自覚的な身体負担度によるストレスが高くなっていました。
医療や飲食など生活の根幹を支え、かつ対面での営業が難しい産業は、特にコロナ禍での影響を大きく受けるため、仕事にストレスを感じている可能性があります。
このようにコロナ禍での仕事にストレスを感じている人が増えているため、企業は従業員に対して適切なメンタルケアを行う必要があります。
そこで、ストレスマネジメントの方法について解説していきます。
2015年の労働安全衛生法の改正に伴い、50人以上の労働者がいる事業場では年に1回のストレスチェックが義務化されたため、すでに取り組んでいるという企業も多いのではないでしょうか。
ストレスチェックを行うことで従業員のメンタルヘルスを定期的に把握できるため、ケアが必要な人の早期発見が期待できます。
また、従業員も自分のメンタル状況を客観的にチェックすることで、ストレスでつぶれてしまう前に改善に向けた動きを検討するでしょう。
従業員との個別面談を実施して、ストレス解決に向けてともに考えて対策を実施しましょう。
従業員への指導立場にある管理職や上司が直接話を聞くことで、職場改善に役立てることができます。
各従業員の業務量を把握し、偏りが出ていないか確認する必要もあります。
業務の集中や残業の多い従業員を把握し、業務量を調整することで負荷の集中を防ぎます。
また、部署ごとでの業務の割り振りを見直すことも有効です。
ストレスマネジメント研修では、ストレスの対処法や上手く付き合うコツを学ぶことができます。
管理職専用のセミナーや手軽に受講できるeラーニングなどもあるので、対象者の役職や従業員規模に応じて適切なプログラムを選びましょう。
従業員がストレスを発散できるように、福利厚生制度を充実させ、気分転換を促すことも効果的です。
補助制度やノー残業デーを設けることでワークライフバランスを確立するとともに、モチベーションアップも狙えるでしょう。
最後に、場所を問わず一人でも行えるストレスのセルフケア方法を紹介します。
リラックスして心身を落ち着かせる効果が期待できるため、従業員の方々にも広めましょう。
腹式呼吸とは横隔膜を大きく動かして一度に多くの空気を吸い込む呼吸法です。
就寝時などリラックス状態での呼吸に近く、深くゆっくりと空気を取り込むことで新鮮な酸素が全身を巡って血行が良くなり、心身ともにリフレッシュできるでしょう。
〈腹式呼吸のやり方〉
①.仰向けになり、落ち着いて口から息を吐きます。体内の空気を放出するようにゆっくりと吐き出すのがポイントです。
また、お腹が少しずつ引っ込むことを意識しましょう。
②.鼻から大きく息を吸い込みます。鼻呼吸のポイントは、舌を上顎につけるように意識することです。このとき、下腹が膨らむのを意識します。
③.再度、口から息を吐き出します。空気を吸う時間の1.5倍~2倍の時間をかけて、ゆっくりと吐き出しましょう。
④.①~③を繰り返します。慣れてきたら、吸う時間の4倍の時間をかけて空気を吐き出すようにします。
マインドフルネスとは、ネガティブ思考によって「心ここにあらず」の状態から抜け出すためのセルフケア方法です。
瞑想に至ることで脳を活性化させ、ストレスをたまりにくくする効果があるといわれています。
〈マインドフルネス瞑想のやり方〉
①.背筋をピンと張って座ります。
目は軽く閉じるか、薄く目を開けて斜め前を見ると良いでしょう。
②.息を吸うときに、お腹や胸の間隔を意識し、徐々に膨らんでいくことを実感します。呼吸は一番リラックスできる方法で問題ありません。
③.息を吐き出す際は、反対にお腹や胸が縮んでいくことを実感しましょう。
④.呼吸に集中できるようになったら体全体や浮かんでくる思考に注意を向けながら次第に意識を開放し、最終的にはただ座っている状態になります。
新型コロナウイルス感染症拡大前に比べて健康や将来に不安を感じる人が増えており、仕事でもストレスを感じる人が増加しています。
特に30代~40代男性と20代以下~30代女性での高ストレス率は高く、何らかのケアを必要としていると考えられます。
従業員をストレスから守るために、定期的なストレスチェックや個別面談の実施、ストレスマネジメント研修などを行いましょう。
また、従業員の業務量を把握して割り振りを調整したり、リフレッシュできるように福利厚生を充実させたりすることも有効です。
さらに、従業員がストレスと上手く向き合えるように、腹式呼吸やマインドフルネス瞑想に取り組むのもよいでしょう。