新型コロナウイルス感染拡大防止の観点などから在宅勤務も普及しましたが、自宅での仕事にストレスを感じている従業員も多いようです。
極度のストレスは自律神経を乱し、メンタルヘルス不調につながる可能性があります。在宅勤務を継続しながら、ストレスを緩和する方法はあるのでしょうか。
今回は、在宅勤務の従業員が抱えているストレスの原因や、企業が行うストレス対策について紹介していきます。
いくつかの調査により、在宅勤務にストレスを感じ、メンタルヘルス不調に陥る従業員が増えていることがわかりました。
例えば、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2021年に発表した「在宅勤務者のメンタルヘルスの現況 在宅勤務は何をもたらすのか」によると、2016年の国民生活基礎調査と比較して、在宅勤務者は男女どの年代でもメンタルヘルス不調の可能性が高い人が多いことが判明しています。
また、株式会社月間総務が2020年に実施した調査によると、在宅勤務の推進によりストレスが増えたと回答した総務担当者は54.6%でした。
これらの調査結果を踏まえ、在宅勤務中の従業員がストレスによりメンタルヘルス不調に陥らないよう、企業が適切に管理・対応する必要があります。
従業員のメンタルヘルス不調を防ぐ必要がある一方、在宅勤務では従業員のメンタル状況がわかりにくいという課題があります。
先の月間総務の調査では、従業員からのメンタル不調の相談に変化があるかという質問に対して、36.5%の担当者が「把握できていない」と回答しました。
また、在宅勤務により従業員のメンタルケアが難しいと回答した担当者は73.3%でした。
従業員がメンタルヘルス不調に陥る理由を把握するには、在宅勤務がどのような心理的影響を与えているのか理解する必要があるでしょう。
従業員のメンタルヘルス不調には、在宅勤務による生活の変化が影響している可能性があります。
そこで、ストレスを引き起こす可能性のある生活習慣について見ていきましょう。
まず生活リズムの乱れが考えられます。
在宅勤務により始業ギリギリまで寝られるようになったことで、夜更かしや寝坊が習慣化している人もいるようです。
睡眠不足が続くとストレスに対応するコルチゾールなどのホルモンが不足し、ストレスの影響をより受けやすくなります。
一日中誰とも会話する機会がないと、コミュニケーション不足でストレスを感じてしまうという人も少なくないはずです。
在宅勤務では同僚と雑談する機会もなく、仕事のやり取りもメールやチャットなどが主流になっているため、孤独や不安を感じる人も多いことが予想されます。
在宅勤務は勤務時間の管理が難しいため、残業や長時間労働になりがちです。
また、業務の進捗状況が伝わりにくいため、必要以上に残業してまで成果を出そうとする従業員もいるようです。
自宅の机や椅子が長時間作業に向いていない、照明が暗く目が疲れやすいなど、仕事をする環境が整っていないとストレスを感じやすくなります。
また、家族や同居人がいる場合、気を遣わなければならないという人もいるでしょう。
適度な運動は自律神経を整えてストレスを発散する効果がありますが、在宅勤務で体を動かしていないとストレスが蓄積されるリスクがあります。
極度のストレスは自律神経を乱し、脳を疲弊させて心身の不調につながるといわれています。
在宅勤務者がさまざまな理由でストレスを抱えていることがわかりましたが、企業としてどのような対策を実施すればよいでしょうか。
在宅勤務の従業員のストレスをケアする方法について紹介します。
企業には、従業員を労災から守り快適な職場環境を管理する「安全配慮義務」が課せられているので、仕事に適した在宅勤務環境を構築するよう従業員に指導する必要があります。
作業環境は、厚生労働省の「テレワーク導入ための労務管理等Q&A集」を参考にするのがポイントです。
上司や人事担当者は従業員の勤務環境を把握し、作業に適した環境を用意できない従業員に対してはパソコンなどの各種設備の貸与や臨時手当を支給するなどの対策を講じましょう。
ラインケアとは、直属の上司や課長・部長などの管理監督者が部下の相談に対応することです。
在宅勤務では孤独感や孤立感を高めやすいので、定期的にオンラインでの面談やミーティングを設定して従業員の様子に気を配りましょう。
定期的なストレスチェックの実施も従業員のメンタルヘルス不調を防ぐ効果が期待できます。
上司が部下のメンタルヘルス状態の把握に用いるとともに、自分の不調に気づいた従業員を相談につなげやすくすることもできます。
在宅勤務では勤務時間が間延びしがちなので、メールやチャットでの出退勤報告や勤怠管理ツールにより労働時間を管理します。
朝礼・終礼の実施も区切りとして有効といえます。
ほかにも、残業や休日労働に関しては事前申告制や事後の実績報告を義務化して、なるべく長時間労働を減らすように働きかける必要があるでしょう。
在宅勤務をしている従業員がセルフケアをすることも大切です。
ストレスマネジメントのeラーニングや軽いストレッチなど、従業員が自宅でできるストレスケア方法を勧めてみましょう。
在宅勤務ではオンオフの切り替えが難しいため、チームメンバー全員でのオンライン上の雑談タイムや運動タイムを取り入れるなどの提案も取り入れてみてはいかがでしょうか。
在宅勤務のストレスによりメンタルヘルス不調になる従業員が増加しています。
夜更かし・寝坊など生活リズムの乱れ、コミュニケーション不足、運動不足など、在宅勤務による生活の変化がストレスとなっているようです。
また、自宅の環境が仕事にふさわしくない場合や勤務時間を無視した長時間労働なども原因のひとつといわれています。
在宅勤務の従業員が一人でストレスを抱え込むことのないように、ストレスチェックやラインケアを実施して、従業員のメンタルヘルスの把握に努めましょう。
また、自宅でも快適に仕事に専念できるように環境指導を行うとともに、長時間労働を防ぐことも大切です。